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JIS丸めと鋼板の角重量計算

2023/4/4

鉄鋼の重量計算において、販売管理ソフトなどで計算される重量と、電卓やエクセルで手計算した重量が微妙に異なり、お問い合わせをいただくことがあります。

これは、正式な鉄鋼重量計算では日本産業規格(JIS)の中の「JIS Z8401 数値の丸め方」で定められた丸め方を計算過程で複数回使用するので計算結果に差が出るためです。いわゆるJIS丸めと呼ばれる計算方法です。

JIS丸めをわかりやすく噛み砕いた説明と鋼板の角重量計算の実例をまとめた社内教育用資料です。参考にしてみてください。

JIS丸めではなぜ四捨五入を使わないのか

数値を丸めるときに、一般的には四捨五入が多く使われます。

しかし、工業における数値丸めで四捨五入を使うと問題が生じることがあります。四捨五入だと、5は1~9の真ん中にあるのに常に切り上げられてしまうので、丸めた結果が現実の数値より大きくなる方向に偏ってしまうからです。

小数点以下を四捨五入して整数に丸めるときの例です。

11
10.502  ← 10.5よりわずかでも大きいものは、1~9の真ん中より大きいので0.5を切り上げて11にしても偏らない。

11 ?
10.500  ← 10.5は10.1~10.9のちょうど真ん中にあるのに、四捨五入では常に切り上げてしまうことになり、結果として総合計は大きい方に偏ってしまう。

10
10.498  ← 10.5よりわずかでも小さいものは、10.1~10.9の真ん中より小さいので0.4を切り捨てて10にしても偏らない。

すると、例えば隙間のサイズ計算であればいくつか部品を重ね合わせた隙間が計算結果よりも狭くなり、入るはずだったモノが入らなかったり、いくつかの部品を組み合わせた耐荷重計算であれば実物が想定より弱くて壊れたりといったトラブルが起きます。

そのため、日本産業規格(JIS)の中の「JIS Z8401 数値の丸め方」では「5を丸めるときに偏らせない」という目的で、単純な四捨五入で丸めないルールを使います。

有効数字と有効桁数

有効数字というのは測定結果などを表す数字から0.00…のような位取りを表すゼロを除いた意味のある数字のことです。

有効桁数とは、有効数字の桁数です。例えば有効桁数4桁であれば下の例の部分になります。

1234

1234567

1.23456

0.0123456

0.001200215

有効桁数4桁に丸める、という場合は上で示した桁数だけが残るように、ルールに従って数値を丸めます。

JIS Z8401の丸め方と実例

基本は四捨六入

例えば10.256や10.400や10.496を整数に丸めるなら小数点以下を切り捨てて10。10.600や10.612や10.892なら小数点以下を切り上げて11。

5を丸めるとき、下に有効数字があれば切り上げ

例えば10.502を整数に丸めるなら5の下に02があるので切り上げて11。

5を丸めるとき、その下に有効数字がなければ、5のひとつ上の位が偶数だったら切り捨て、奇数だったら切り上げ

例えば10.500を整数に丸めるなら5の上が0で偶数なので切り捨てて10。11.500なら5の上が1で奇数なので切り上げて12。18.500なら5の上が8で偶数なので切り捨てて18。奇数か偶数かで半々の確率で場合分けするので偏りにくい。

JIS丸めを使う効果

四捨五入とJIS丸めを比べてみます。

下の表で、「元の数字」は1.10から4.00まで0.1ずつ数値を増やしたものです。

それを四捨五入で整数に丸めたものと、JISの丸め方で整数に丸めたものが横に並べてあります。

それぞれを合計してみると、元の数字の合計は76.50なのに対して四捨五入で丸めたものの合計は78.00になりますが、JISの丸め方のほうは77.00となり、元の数値に近い結果が出せました。

鋼板の重量計算の手順(角重量)

  1. 板厚(mm) と 比重(鉄7.85) を掛けて、有効桁数4桁に丸めて面積1mm角あたりの重量(kg)を出す。
  2. 幅(m) と 長さ(m)を掛けて、有効桁数4桁に丸めて面積を出す。
  3. 上の1と2を掛けて、有効桁数3桁に丸めて単重(kg)を出す。ただし、単重が1000kg以上のときは有効桁数3桁に丸めてしまうと1の位を0にしてしまうので整数に丸める。
  4. 単重に員数を掛けて、整数に丸めて単重(kg)を出す。ただし1kg未満であれば有効桁数3桁に丸める。

つまり、計算過程で数値丸めが4回発生するので、四捨五入の計算と比べて数kgの差が生じることがあります。

ただし、JIS丸めは専用のソフトなどを使用しないと計算に手間がかかります。そのため、通常の実務で輸送重量や概略価格のお見積りをする場合には電卓やエクセルを使用して単純な四捨五入で出した重量を使用する場合もあります。

計算例1

SS400
板厚85mm x 幅100mm x 長さ217mm – 員数5枚

1. 85mm x 7.85 = 667.25
有効桁数4桁に丸める。丸める桁の数値が5。上の位は2で偶数なので5を切り捨てて 667.2
2. 幅0.100m x 長さ0.217m = 0.02170
有効桁数4桁に丸める。2170は4桁なのでそのまま0.02170
3. 667.2 x 0.02170 = 14.47824 kg
有効桁数3桁まで丸めて、単重14.5kg
4. 単重14.5kg x 員数5枚 = 72.5 → 重量72 kg
※ 0.5を丸めるときに上の位が2で偶数なので0.5を切り捨てる

計算例2

SS400
板厚85mm x 幅100mm x 長さ217mm – 員数7枚

1. 85mm x 7.85 = 667.25
有効桁数4桁に丸める。丸める桁の数値が5。上の位は2で偶数なので5を切り捨てて 667.2
2. 幅0.100m x 長さ0.217m = 0.02170
有効桁数4桁に丸める。2170は4桁なのでそのまま0.02170
3. 667.2 x 0.02170 = 14.47824 kg
有効桁数3桁まで丸めて、単重14.5kg
4. 単重14.5kg x 員数7枚 = 101.5 → 重量102 kg
※ 0.5を丸めるときに上の位が1で奇数なので0.5を切り上げる

計算例3

SS400
板厚150mm x 幅1020mm x 長さ2152mm – 員数4枚

1. 150mm x 7.85 = 1177.5
有効桁数4桁に丸める。5桁目の数値は5。上の位は7で奇数なので5を切り上げて 1178
2. 幅1.020mm x 長さ2.152mm = 2.19504
有効桁数4桁に丸めて 2.195
3. 1178 x 2.195 = 2585.71 kg
有効桁数3桁以上なので整数に丸めて、単重2586kg
4. 単重2586kg x 員数4枚 = 10344 → 重量10344 kg

計算例4

SS400
板厚230mm x 幅958mm x 長さ984mm – 員数2枚

1. 230mm x 7.85 = 1805.5
有効桁数4桁に丸める。5桁目の数値は5。上の位は5で奇数なので5を切り上げて 1806
2. 幅0.958mm x 長さ0.984mm = 0.942672
有効桁数4桁に丸める。0.9427
3. 1806 x 0.9427 = 1702.5162 kg
有効桁数3桁以上なので整数に丸めて、単重1703kg
4. 単重1703kg x 員数2枚 = 3406 → 重量3406 kg

計算例5

SS400
板厚1.2mm x 幅51mm x 長さ52mm – 員数3枚

1. 1.2mm x 7.85 = 9.420
有効桁数4桁に丸める。9420は4桁なのでそのまま9.420
2. 幅0.051m x 長さ0.052m = 0.002652
有効桁数4桁に丸める。2652は4桁なのでそのまま0.002652
3. 9.420 x 0.002652 = 0.02498184 kg
有効桁数3桁まで丸めて、単重0.0250kg
4. 単重0.0250kg x 員数3枚 = 0.075 → 重量0.075kg

※ 1kg未満の場合については全て1kgとするなど、実務上は各社それぞれのルールが存在します。

ダウンロード用A4資料

A4サイズ2ページの資料としてまとめました。

JIS丸めと鋼板の重量計算 (PDF 224KB)

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